俳優という職業は個人事業主であって、企業でいえば中小零細、職人でいうならひとり親方みたいなもの、と言えるだろう。だから、雇用主に対しては実に弱い請負人の立場である。主導権を握って仕事ができるのはごく一部であって、脇役の大多数はそんな境遇にある。あくまで企業的に見ればではあるが・・・。
昨日(1月21日)午後6時から2時間ばかり、ぼくは東京・千駄ヶ谷にある所属事務所(俳協)の一室で、一昨年関係した映画の出演料未納問題を、担当マネージャーと俳優仲間の計7人で話し合った。係争中なので詳しい説明は省くが、結論的にはどうも泣き寝入りになりそうな形勢なのだ。
われわれは個人事業主ではあるが、仕事の斡旋をプロダクション(俳協)に委託している訳で、ある意味では俳協という事業体が最大の被害者(俳優の交通費やマネジメントに関わる諸経費などを既に負担)だが、俳優は個人であるだけに痛手が大きいのでマネジャー連中も責任を感じるのだろう。
しかし、大事なことは、この長引く不況下で制作会社の倒産など、未払いの事態が今後も予想される昨今、弱い立場の俳優が泣き寝入りするようなことがないように、しっかりと対策を持つことが必要だろう。会社の損金処理のような方法とか、俳優の被害を防ぐ方策が要るだろう。
俳協は正式名称を「東京俳優生活協同組合」というように、プロダクションとしては他に類をみない生協法を採用している組織で、マネージャーやデスク事務局員、俳優が等しく組合員である。民主的な運営は誇れるが、事業内容は芸能プロそのものなので 生協法が足枷となる部分もある。が、そうした制約があっても、俳優団体本来の創造活動を円滑に推進できないはずがない。
俳優が理事として経営に奔走している方がいる反面、ぼくのような役者バカ丸出しの者が組織に注文を出すなどおこがましいが、創立50年の経過を共に歩んできた者として、初心を大切にしたい気持ちは強い。俳優仲間が寄れば「仕事か無い」の話題では落ち込むばかり。内なる目的、めざす目標を、俳協も個々の俳優も持っているはずで、苦しくともいい仕事をしたい、とぼくは考えている。
*俳協 HP http://haikyo.or.jp/
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