2009年11月17日火曜日

遠~くからお悔やみを・・・・

 ぼくのようなペイペイの役者にとっては、文字通り“雲の上の存在”だった名優・森繁久弥さんが亡くなられた。11月10日午前8時16分、老衰のため眠るように逝ったと報じる新聞記事が哀しい。

 もう33年も前のことになるが、TBSをキー局に放映された連続テレビドラマ「三男三女婿一匹」という番組で、ぼくは初めて森繁さんと絡む役を頂いた。たった1シーンではあったが、いまでも鮮明に覚えている。

 このドラマは森繁さんが個人病院の院長役を主演され、その主人公が家族ぐるみで営んでいる桂病院を舞台に、そこで繰り広げられる人間模様を描いた、いわばTBSオハコのホームドラマであった。

 で、ぼくが関わったのは、注釈(*)をつけると以下のようなシーンだった。

◎桂家=病院=本宅・食堂(夜)
      
             *主人公桂大五郎と長男の
              啓介が話しているところに・・・

 インター   上野×町の榊さんから、電話が入って
 ホンの声 ます、

 大五郎  つないで(と待って)やあ、暫く・・・・仲良くやっ
        とるかい?! え?! ミサちゃんが?! 待った、動
        かさんほうがいい・・・すぐ行くから・・・判った、
    
             と切って

 大五郎  往診だ
 啓  介  榊さんって、父さんが仲人したあの人・・・・・?
 大五郎  ミサちゃんて、三つになる赤ん坊が三階のベラ
        ンダから・・・・
 啓  介  落ちたの?!
 大五郎  ・・・・・動かせる様なら、直ぐ手術するから

             と出て行く

 啓  介  (インターホンに)外科、緊急手術の用意をして
       待機・・・・車を用意して、当直看護婦一名乗っ
       て待っててくれッ

             と出て行く

◎同、病院、廊下
             小走りに行く大五郎

◎同、ロビー
 
 大五郎  早くしろ、早く・・・・
 啓  介  (外から入って来て)もう、みんな乗り込んで
        るよ
 大五郎  あ、そうか

             と急ぎ出ていく

◎榊家・表
           女の子駆け出してきて、うずくまり泣く。
           (間)
           啓介、大五郎、看護婦やってきて、思わ
           ず 足がすくむ

大五郎  ・・・・・・
啓  介  ・・・・院長、とに角・・・・・
大五郎  うむ・・・・

◎同、座敷
             枕頭に、白布がかけられ、若い母親が
             泣いている。
             大五郎入って来る、

父  親  ・・・・・先生・・・・ッ
大五郎  ・・・・・・・
父  親  先刻、近所の先生に診て頂いたんですが・・・・
母  親  ・・・・私がいけなかったの、私が・・・・・ミサちゃん
       御免・・・・ミサチャン・・・御免ッ

             と取り乱している
父  親  おいッ

大五郎  ・・・・

            大五郎白布を取って見る

父  親  ・・・・桂先生・・・脈だけでもとってやって頂けませ
      んか・・・

         大五郎、黙って女の子の手をしっかりと握る 

父  親  落ちた時には・・・・意識がなくて・・・・人工呼吸も
       して下さったンですが・・・・
大五郎  (*アドリブで)どのくらい・・・・
父  親  三十分ほど前です
大五郎  何の役にも立てなくて・・・・
啓  介  ・・・・・誠に残念でした、

 以上が直接関わったところで、父親役をぼくが、母親役はぼくと同じ事務所の女優さんで普段から「おすみさん」と呼んで親しい坂井すみ江さんが演った。森繁さんのマトを得たアドリブは有名だが、人物形象や芝居での間の持ち方など、凄い勉強をさせて頂いた。 (合掌)
    

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